摂食・嚥下と舌の動き
噛む・飲み込む機能についてご説明します。

摂食・嚥下と舌の動き

「摂食・嚥下」について

摂食・嚥下とは、食物を見る、匂いを嗅ぐといった動作を通して認知し、それを口腔に取り込み、咀嚼(そしゃく)により食塊を形成し、嚥下(えんげ)して胃に移送する過程を指す。(下記の流れ)

食べ物をみつけ口腔に入れる

食べ物を咀嚼し食塊にする

食塊をまとめ、飲み込む準備をする

食塊をのどの奥に送り込み嚥下する。

嚥下した食べ物を胃に送る

摂食・嚥下と舌の動き

摂食・嚥下と舌の機能とは

捕食(ほしょく)

食べ物を認識し、口に入れます。この時は、唇と歯を用います。
捕食したものは、舌で受け取り、温度や食べ物の物性を瞬時に感じ取ります。

咀嚼(そしゃく)

口に入れた食べ物が咀嚼が必要な場合、食べ物を歯で咀嚼します。このとき、舌は食べ物を歯と歯の間に移動させる動きをし、また、歯で食べ物を噛み砕く時に、舌で食べ物を保持します。

嚥下(えんげ)

食べ物が十分細かくなると、舌は口腔内の食べ物を集めて、のどの奥に送り込みます。のどの奥から食道へ食べ物を送り込む際には、舌によって押し出される強い筋力が必要になります。

舌機能が落ちると低栄養になる

舌圧の低い人は、食事の際にむせる、食べこぼしなどをして食べ物をうまく摂取できず、結果として体内に栄養を十分取り入れることができないため低栄養に陥っていると考えられます。
介護を要する高齢者の場合、舌の運動機能の良否がその人の栄養状態と関連していることが分かります。
栄養が十分摂取できないと、弱った筋肉が更に弱り、同時に舌の運動機能も落ちるため、ますます低栄養になることもあります。
低栄養を予防するためには、全身の筋力強化と同様に、舌に対するリハビリテーションが必要になります。

口まわりが衰えると、誤嚥性肺炎を引き起こしやすい

誤嚥性肺炎は、誤嚥の際に食べると一緒に細菌が器官に入り、肺に炎症を起こすことで発症します。自分の唾液を嚥下して起こることもあります。つまり、舌やのどの衰えによって嚥下がうまくいかなくなったり、口腔内が不潔になるなどの原因で細菌が繁殖したりすると、誤嚥性肺炎はおこりやすくなるわけです。

舌や頬を噛むのは口の機能が低下した証拠!

次のようなことが増えてきたら、舌や口の「老化」がはじまっているサインです。

  • 食べこぼす
  • 誤嚥する、むせる
  • 舌や頬を噛む
  • 口角が下がってきた、ほうれい線が濃くなってきた
  • のどぼとけが下がってきた
  • ブクブクうがいをしたとき、出てくる食べかすが増えた。
  • 人と食事したとき、自分だけ食べるのが遅い
  • 話が聞き取りづらいと言われるようになった

窒息事故は舌の衰えが原因

窒息事故で毎年一万人近くの人が亡くなっています。窒息事故の原因となるのは、次の3つです。

  • 咀嚼機能(噛むこと)の低下
  • 嚥下機能(飲み込むこと)の低下
  • 認知機能(脳による判断力)の低下

窒息するということは、のどが詰まるということですから、嚥下機能だけの問題であるととらえられがちです。咀嚼機能や認知機能も、窒息事故の原因となるカギを握っています。

例えば、認知機能が低下すれば、丸のみや詰め込みが多くなります。
認知症が進むと食事のスピードをうまく調整できず、いわゆる早食いになってしまう人が少なくありません。食べるという動作をうまくコントロールできないために、窒息事故につながるというわけです。
そして、窒息事故は、咀嚼機能の低下が最も大きな原因である、という研究結果が出ています。
よく噛まないために食べ物を十分に噛みくだかず、そのまま適当にのどに送ってしまうわけです。
咀嚼機能が落ちると、まさに、そういった状態が頻発するのです。そこで、嚥下機能や認知機能も働けばまだしも、高齢者は、嚥下機能も認知機能も低下しているために、窒息事故が起きてしまいます。
窒息事故はのどで起こりますが、その原因は噛む過程にあったというわけです。
舌と歯を使って食べ物をしっかりと噛み砕いていれば、防げる窒息事故はたくさんあったはずです。

しっかりと噛むことが窒息予防になるのです。そして、しっかり噛むには、舌の巧みな動きやパワーが欠かせないのです。

舌の汚れ(舌苔)は舌の機能の低下を表す

舌の場合、表面にうっすらと白っぽいものがつくことがあります。これを舌苔(ぜったい)といいます。
舌苔は、舌の汚れです。舌の表面をよく見てみると、小さな突起がたくさんあるのがわかると思います。これは、乳頭と呼ばれるものですが、この突起による凸凹に食べかすや細胞のかすなどがたまることで、舌苔が付着します。
しかし、私達は通常、舌を磨いて舌苔を取る必要はありません。食べたり話したりすることで舌が動き、大部分は自然に取れてしまうからです。
このように、口の中はある程度自浄作用が働くのですが、舌の動きが悪くなったり、唾液の量が減ったりすると、舌苔がとれにくくなります。
舌苔の付着は、舌の機能が衰えている証拠。口を動かさなくなったり、噛めていなかったりすることで起こるのです。
舌苔が多く付くようになったら、まずは歯科医に相談しましょう。そして、口腔機能低下症の検査を受け、機能面に問題がないか診断し、予防・改善に努めることが大切です。
繰り返しになりますが、舌苔が付くのは舌を磨かないからではなく、舌の機能の低下が原因です。

舌苔がたまると、口臭の原因になったり、そこに細菌が繁殖することで、誤嚥性肺炎の原因となります。高齢者などで、柔らかい歯ブラシや舌ブラシでやさしくかき出すなどのケアが必要です。

舌の筋力は動かすことで鍛えられる

舌の筋力は、食事やおしゃべりなど、舌を動かすことである程度維持できます。
舌をよく動かそうと思っている人には、まず適度な全身運動、筋トレをおすすめします。
話したり歌ったりするのは、舌の運動機能によります。したがって、舌の動きが悪くなったり、歯を失うと、正しい発音ができなくなり、言葉を伝えにくくなります。
舌の不調を少しでも感じるなら、舌の老化を遅くするために、よく噛み、よくしゃべり、日常生活の中で意識して舌をよく動かすようにしてみてください。

舌と口まわりを鍛える体操もご紹介しますから、一度御来院ください。簡単にできるものばかりなので、実際にやってみて日々の習慣にしてください。

著者名『あなたの老いは舌から始まる』菊谷武 (NHK出版、2018年発行). 引用

口のトレーニングで口腔機能の老化を防ぐ!

 メタボリックシンドローム(代謝症候群:メタボ)
 ロコモティブシンドローム(運動器症候群:ロコモ)
 サルコペニア(筋肉量低下:サルコ)
 フレイル(虚弱)

上に挙げたこれらの症状は、相互に深く関係しています。悪い習慣がはじまりですが、口の機能が低下すると、質の高い食事が難しくなり、メタボになります。またタンパク質の不足は筋肉量の低下を引き起こします。それは、運動機能の低下を引き起こし、さらにメタボを進行させます。
そして最後には、全身がフレイル(虚弱)になってしまいます。
この悪い循環を断ち切るには、早期に悪い習慣を排除し、口の機能を高め、質の高い楽しい食事をすることが重要です。

 歯科では、「オーラルフレイル(口腔の虚弱)」が問題になっています。これは、「滑舌低下:すばやくはっきりとはなせなくなる」「食べこぼし」「食べ物が気管に入ってむせる」「硬いものほど咬めなくなる」「口が乾燥する」など、加齢による口の機能が低下した状態です。
放置しておくと全体のフレイル(虚弱)になり、要介護へとなってしまいます。食事も満足に楽しめなくなり、生活習慣病もなりやすくなります。
オーラルフレイルの状態をきちんと把握するために、2018年4月からある程度以上、進行したオーラルフレイルの診断名である「口腔機能低下症」の検査が保険に導入されました。

口のトレーニングとして次のようなものがあり、症状に合わせて治療を行った上でトレーニングを行ってもらっています。

① 舌苔清掃(舌の表面の舌苔という汚れを清掃)
② 唾液腺マッサージ(3つの唾液腺のマッサージ)
③ 1日30回咬んで食べる
④ パタカラ体操(はっきりとパタカラ)と繰り返す
⑤ 腹式呼吸
⑥ 舌運動(舌を前後左右回転させる)
⑦ 空嚥下(食事前にゴクンとつばを飲み込む)

【引用】
著者名「美しい歯と口:オーラルフレイル予防の秘訣」佐藤裕二
(サンエイ新書 2019年発行)



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